「Another 2001」は、2011年11月に発売された「Another」(上・下巻)・「Another エピソード S」(2014.12)に次ぐシリーズ3作目の最新作です。
「Another」は、ホラーとミステリーを融合させた綾辻行人の意欲作で、その試みは大成功を収め原作小説65万部、コミックシリーズ50万部突破と大ヒット!アニメ化・実写映画化もされた人気作品です。
「Another 2001」初見でもそこそこ楽しめるとは思いますが、「Another」の世界観を存分に楽しむためには、「Another」(上・下巻)・「Another エピソード S」と順番に読みすすめることをおすすめします。
Another について
Another
ネタバレあり
ホラーの世界観
夜見山中学の3年3組にだけ起きる怪奇現象によってクラスの関係者の不審な死が続くというホラーな世界。4月、3年3組のクラスで机が一つ足りないということが数年に一度起きる。その年は、そのクラスに死者が一人紛れていて「ある年」と呼ばれる。「ある年」には、毎月数人のクラス関係者が不審な死を遂げる「災厄」が起こる。何もしないと卒業まで続くと言われれいる。
紛れていると言われる死者は、過去のある年に死んだ誰かが生きていた時と同じ姿で蘇ったもので普通の人間と何ら変わらず本人も死者であると気づくことはない。家族やクラスメイトの記憶や名簿などの記録の改ざんが起こり死者を探そうとしても当事者たちには見つけることができない。
3年3組では、「災厄」を防ぐべく対策を講じるすべが引き継がれている。その対策というのは、「いないもの」と呼ばれる一人を定め、1年間「いないもの」になった一人はクラスメイトから本当にいないものとして空気のような存在として扱われる(本人も振る舞う)というものである。
1年間「いないもの」としてクラス全員が振る舞うことができれば「災厄」は抑えられるが、振る舞うことに失敗すると「災厄」が始まる。
ミステリー要素
読者が推理できるミステリー要素としては、ずばり「死者」が誰であるか?という点です。きっちり検証したわけではありませんが、それを推理する伏線は物語の中にしっかり描かれていると思います。ただし、一筋縄では解けない設定であることは間違いありません。
アニメ作品
「Another」の世界観をうまく表現した楽しめる作品です。見崎鳴のお人形のようなキャラクター描写も秀逸で、小説を読まなくても「Another 2001」の前にアニメを見ておくというのもありです。(両方ともにふれるのが一番いいのですが)
Another エピソード S
「Another」のスピンオフ的作品です。この作品で「Another 2001」の主人公・想が鳴と知り合いになり、度々出てくる賢木晃也との関係もこの作品で描かれています。「Another 2001」を読むにあたって事前に読んでいなくてもそれほど理解には影響ないと思います。
一九九八年の夏休み。異能の美少女・見崎鳴、十五歳。恐るべき“災厄”が続く夜見山をいっとき離れ、両親とともに緋波町の別荘にやってきた鳴は、かつて夜見山北中学の三年三組で同じ“現象”を経験した青年・賢木晃也に会うため、彼が住む“湖畔の屋敷”を訪れる。ところが、そこで鳴が遭遇したのは、三ヵ月前に謎の死を遂げた賢木の幽霊だった―!死の前後の記憶を失い、行方の分からない自分の死体を探しつづけていた幽霊と鳴の、奇妙な秘密の冒険が始まるのだが…。
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Another 2001
多くの犠牲者が出た1998年度の“災厄”から3年。春から夜見北中三年三組の一員となる生徒たちの中には、3年前の夏、見崎鳴と出会った少年・想の姿があった。“死者”がクラスにまぎれこむ“現象”に備えて、今年は特別な“対策”を講じる想たちだったが、ある出来事をきっかけに歯車が狂いはじめ、ついに惨劇の幕が開く!相次ぐ理不尽な“死”の恐怖、そして深まりゆく謎。“夜見山現象”史上最凶の“災厄”に、想と鳴はどう立ち向かうのか―!?
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「Another」から3年後の夜見山中学3年3組のある年に起こった物語。主人公は、「Another エピソード S」で知り合いになった比良塚想と見崎鳴。夜見山中学3年3組になり「いないもの」となった想を3年前に「いないもの」であった鳴が相談者となり「災厄」に対処するお話。
基本的な世界観は当然ながら「Another」と同じです。ただ「Another」と違う点が、「いないもの」をはじめから二人に設定したこと。その対策は功を奏するのか?
「Another 2001」の物語は、2段構えになっています。前半は、従来どおりの「ある年」に起こる「災厄」がなぞられます。「いないもの」の対策が失敗に終わり「災厄」が始まり「死者」を排除し「災厄」を終わらせるという流れです。
前半の物語展開は、鳴の協力もありある意味あっさりと終りを迎えます。読者的にも「死者」を特定するのはそれほど難しくないでしょう。結構、伏線としてそこかしこにヒントが提示されていたりします。なにより、「Another」から続けて読んでいれば、その不自然さにはすぐに気づくのではないかと思われます。私が「Another」を読んだのは発売当初で9年近く前なので細かなところは忘れているのでその不自然さに気づくことはありませんでしたが・・・
作者的にはそのあたりは織り込み済みなのでしょう。前半はあくまでも前フリ「Another」の世界観の再確認的位置づけで、メインとなるストーリーは、後半からなのですから。
感想など
率直な感想としては、ヒットした人気の話題作の続編としては、よく練られた内容で楽しめる作品です。「Another」の世界を約9年ぶりに堪能することができました。碧い義眼の呪縛から開放された少しおとなになった鳴の姿も魅力的に描かれていてよかったです。
内容的には、たくさんの人たちが理不尽な死を遂げるというホラー要素は十分盛られています。しかし、同じ土俵では、一作目の「Another」のインパクトにはどうやっても追いつかないのは致し方無いでしょう。
ミステリー要素としては、かなりひねりを加えた内容で、若干冗長な感じを受ける文章からもかなり苦労されたであろうことを感じさせられます。
死者を指摘するとういミステリー要素については、続編ということもあり、ある程度消去法も含めて予想することはそれほど難しくないように思います。ただ、その背景や伏線の説明など作者の設定した矛盾のないミステリー要素を完璧に理解して答えを導き出せるかというとそれは難しいと言わざるを得ません。
最後の最後、すべての謎が明かされる時には、やはりあっと驚かされ、なるほどそうきたか!と感心させられることでしょう。このあたりの練り込み方はさすがミステリーの第一人者の綾辻行人ならではといったところです。
あとがきで、もう一作品の続編(「Another 2009」と言われている)についても構想はあるがいつ発表できるかはわからないと述べられています。また10年ほど先になるのかもですが気長に楽しみに待ちたいと思います。それに「Another 2001」のアニメ化にも期待です。