京アニ最新作の「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、初見でも楽しめる!?

9月18日待望の「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が公開になりました。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 永遠と自動手記人形」から1年、本来なら1月公開予定だったのが、いろんな事がありすぎて公開延期に次ぐ延期となっていました。なんとか無事に公開となりましたことほんとうに感謝です。

22日までの公開5日間で興行収入5.59億円、39万人を動員の大ヒットと嬉しいニュースも聞かれます。

入場特典の暁佳奈描き下ろし超短編小説「ヴァイオレット・エヴァーガーデン If」

「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、初見でも楽しめる楽しめるが、感情移入には雲泥の差がある。

「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、2018年1月~4月にテレビアニメで放送され、昨年9月に公開された映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 永遠と自動手記人形」に続く作品で、シリーズ最終作・グランドフィナーレを飾る作品となります。

通常のシリーズアニメ作品であれば、最終作品だけ初見で観るなど愚行中の愚行で楽しめるわけがないと言い切れるのですが、「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」については、そうならないように工夫された絶妙な作品構成になっています。この作品を見ることで「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズに興味を持ちハマっていく方も少なくないのではないかと思ったりします。

ヴァイオレットの軌跡を辿るという構成の妙

以下、ネタバレあり 注意!! 

近いうちに、「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を観る予定の方は、読まないことをおすすめします!

冒頭のシーンで、母の実家(祖母の家)で祖母の孤独な死を悼む孫のデイジーとその両親の姿が描かれます。医者であり多忙を極める母のせいで祖母に寂しい思いをさせていたと母を批判するような言動をするデイジー。母を尊敬する思いとは裏腹に自身の寂しい思いをついついぶつけてしまったことに後悔の気持ちを抱いているのです。

デイジーは、箱にしまわれた数十通の手紙を見つけます。母によると祖母がその母から送られた手紙で祖母が一番大切にしていた思い出の品であると聞かされます。この祖母がTVアニメ10話のシリーズ屈指の涙腺崩壊エピソードに登場する少女のアンであることがわかります。

開始5分、この時点でTVアニメからのファンはおそらく涙を堪えるのが難しい状況に陥ること間違いありません。初見の方は、デイジー目線で自然に物語に入り込んで行けることでしょう。

デイジーは、母から子に綴られた愛情あふれるその手紙が、ヴァイオレット・エヴァーガーデンという有名なドールが代筆したものであると知るのです。ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、新聞を賑わす数々の華々しい功績を残しながら、18歳以降は忽然と表舞台から姿を消していることに興味をいだきその足取りを辿る旅に出ます。

電話が普及し代筆業が廃れたデイジーの時代と、代筆業が全盛でドールたちが活躍したヴァイオレットの時代の2軸で物語が綴られていきます。デイジーはまずライデンのC.H郵便社を訪れます。そこでエカルテ島だけで発行されているという切手に出会いエカルテ島に向かうのでした。

ヴァイオレット最後のエピソードにはすでに時代の変化が・・・

ヴァイオレットの生い立ちや兵士としてのギルベルト少佐との関係性、終戦後のドールとしての成長など、この作品以前内容は随所で語られ初見の方でも大まかな雰囲気はつかめ、それを踏まえて最後のエピソードを楽しめるようになっています。

今作の代筆の依頼者は、病気で1年近く入院している少年からのもので、両親と弟に向けて自分の死後も温かい気持ちを持ってもらえるような手紙を残したいというものです。3通の手紙を仕上げたあともう一通友人宛に代筆をしてほしいとお願いされるものの体調を崩し後日にと約束してヴァイオレットは病院をあとにします。

その後、ギルベルト少佐の痕跡を求めてエカルテ島にでかけていたさなか、電報のようなシステムで少年の危篤の連絡が入るのです。最後の手紙を書き終えていないヴァイオレットは、約束を果たそうとすぐにライデンに戻ろうとするのですが、3日もかかることから思いとどまり、ライデンにいる同僚のアイリスに代筆を託すのでした。

しかし、病状は悪化し手紙を書けるような状況ではありません。そこでアイリスとベネディクトは病室の少年と友人を電話で話せるように手を尽くし手紙の代わりに友人に少年の最後の言葉を伝える助けをするのです。このことを通じてアイリスは、ドールの仕事を奪う電話ではあるけれどそれほど悪いものでもないと認識を改めるのです。

一方、エカルテ島ではヴァイオレットの最後の物語が進行していきます。ヴァイオレットの思いは叶うのか?18歳で表舞台から姿を消したヴァイオレット・エヴァーガーデンの真実とは・・・

感想:「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、アニメ映画史上に残る名作!

140分を通してこれほど感情を揺さぶられる作品はあまり記憶にありません。おそらくアニメ作品では初めてでしょう。ストーリー構成・登場人物の表情や仕草・風景や街並みの美しい表現・素晴らしい音楽などなどどれをとっても一級の出来栄えです。声優さんたちの演技力も素晴らしい♪

TVアニメと外伝のエッセンスがたっぷりと詰まっていて、その時感じた思いが一つ一つのシーンで溢れてきて自然と涙がこぼれてしまうのです。初見の方はそれほど感情を揺さぶられることはないかもしれませんが、この作品を見てしまえば前作すべてを見たくなるでしょうし、その後もう一度この作品を見直した時、同じ思いを共有できるはずです。

シリーズの完結作品ながら、この作品単独で(初見で見ても)十分楽しめかつヴァイオレット・エヴァーガーデンという作品の素晴らしさを観る人達に伝える力強さをもっているのです。私的には100点満点の作品です。